本年度は衝撃波管を用いた振動励起による反応選択性の変化の検討、部位選択的レーザ誘起に必要な赤外パルスレーザ光の発生に関する実験を行なった。15EA02:1)衝撃波管を用いた振動励起の実験:異なる部位(primary/secondary)を持つ最も単純なアルカンであるC_3H_8を用い、900-1200Kの温度領域で酸素原子との反応選択性を検討した。反応によって生成するi-C_3H_7(secondary引抜)は熱分解して水素原子とプロピレンを生成するのに対し、n-C_3H_7(primary引抜)は熱分解してCH_3ラジカルとエチレンを生成する為、生成する水素原子を原子共鳴吸収法によって定量することにより、反応部位の選択性を検討した。その結果、secondary部位の引抜きの分率は、950Kで25〜30%、1150Kで20〜25%となり、高温になる程減少する傾向があることがわかった。室温での分率50-60%と比較するとprimary部位のレーザ誘起振動励起温度1000K程度でも明確な違いがある事が予想された。 2)赤外パルスレーザ光の発生:アルカンのC-H結合を選択的に励起する為に必要とされる赤外光をNd:YAGレーザの基本波(1064nm)と、色素レーザ光(〜810nm)を差周波混合する事によって発生させた。発生した中赤外光はメタンの吸収スペクトルの測定から3.18-3.43mumの波長掃引が確認され、線幅が1.1cm^<-1>であることが確認されたが、出力は0.1muJ程度であり、振動励起に十分な出力を得る為には更に改善を必要とすると考えられる。
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