研究概要 |
細胞膜類似膜の片側を寒天でサポートした寒天支持型脂質二分子膜を形成し、化学センサー感応膜としての応用を試みた。感応素子としてカリウムイオン(K^+)選択性を有するバリノマイシン(Val)、銅と錯形成することが知られている1-ニトロソ-2-ナフトール(NN)を上記脂質二分子膜に溶かし込むことで感応膜を形成し、それぞれの目的物質に対する応答性について評価した。 (1)Val系:K^+に対する応答信号として膜コンダクタンス、膜電位を測定した。膜電位測定にあたっては本研究費で購入した振動容量型デジタルエレクトメーター(アドバンテスト社製TR8411)を使用した。膜コンダクタンスK^+濃度10^<-4>〜10^<-2>Mの範囲で応答し、膜に対する印加電圧の向きに依存しないものであった。このことから、K^+とValの錯形成によって膜の配向性が乱され、塩化物イオンなどの膜透過性が増大したことが示唆された。また、電位差測定においてはK^+濃度10^<-5>〜10^<-2>Mの範囲で応答し、従来の液膜型イオン選択性電極での報告同様にCs,Na,Rbに対して選択性を示した。 (2)NN系:NNを包埋した膜では銅濃度の増大に伴って膜コンダクタンスは増大したが、Val系とは異なり、印加電圧の向きに依存するものであった。また、マスキング剤を添加することで膜コンダクタンスを可逆的にコントロールすることが可能であった。 以上の結果は日本分析化学会第42年会及び日本分析化学会北海道支部1994年冬季研究発表会において報告し、現在論文投稿準備中である。
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