研究概要 |
油水界面を用いるイオン移動ボルタンメトリーによって,ヘテロポリ酸錯体の界面での特異的な変換反応を見いだした. モリブデン酸ナトリウムを含む水溶液(pH3.5付近)にゲルマニウム酸を加えると,ケギン型の12-モリブドゲルマニウム酸錯体(1)とともに,欠損型の11-モリブドゲルマニウム酸錯体(2)が生成する.これらの錯体アニオンは,ニトロベンゼン/水界面に適当な電位差を印加すると界面を移動し,これによるボルタンメトリー波を与えた.しかし,そのボルタモグラムは独特な挙動を示し,2つの錯体アニオンの独立なイオン移動反応による単純な機構では説明できなかった.先に行った,水中およびニトロベンゼン中での上記の錯体の変換反応の研究,および新たに行った電圧パルスを用いる測定などの結果を踏まえてボルタモグラムを解析した結果,2の錯体が界面を移動する際,速やかに1の錯体に変換することがわかった. 上記の反応は,疎水的環境を持つミクロな反応場としての油水界面の特種性を明確に示す貴重な例である.今後は,ボルタモグラムの計算機シュミレーションにより詳細な解析や,同様に油水界面の特異反応場をいかした反応例の探索などを行っていく予定である. なお,本研究と密接な関係にある以下の研究についての報告を行った:(1)油水界面でのヘテロポリアニオン生成に基づくボルタンメトリー型リン酸センサー,(2)ポリ酸アニオンの疎水性尺度,(3)1,2-ジクロロエタン/水界面でのポリ酸アニオンの移動電位のイオン電荷密度に対する直線的依存性,(4)ポリ酸アニオンのイオン移動ボルタンメトリーについての総合論文.
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