ランタノイド(III)をイオン抽出させた時、ランタノイド(III)の分配比は、原子番号が大きくなるにしたがって、大きくなる場合と小さくなる場合があることが知られているが、ランタノイド(III)の分配比を支配する因子が何によるのかについて知見を得ることを研究の目的とした。 1.ランタノイド(III)のチオシアン酸錯体のトリオクチルフォスフィンオキシド(TOPO)によるクロロホルムへの抽出平衡では、一連のランタノイド(III)の分配比は原子番号が大きくなるにしたがって大きくなり、しかも同じ1Mチオシアン酸ナトリウム水溶液からの抽出であっても、LaとLuでは4桁以上の差が認められた。さらに抽出種はLn(SCN)_3・3TOPO(Ln:ランタノイド(III))のみであると仮定された。以上のことから、クロロホルムへのランタノイド(III)抽出では、抽出種が1種であり、かつ付加する分子数が比較的少ないために、ランタノイド(III)の電荷密度の差が分配比に反映されたと結論づけた。以上のことを「分析化学」に発表した。 2.抽出剤や抽出種との相互作用の弱いヘキサン溶媒を用い、同様の系のクロロホルムの抽出平衡を比較した。同じ1Mチオシアン酸ナトリウム水溶液からの抽出であっても、全ランタノイド(III)を通してせいぜい1桁程度の分配比の増加しか認められなかった。さらにヘキサンでの抽出はクロロホルムの抽出よりはるかに良いこともわかった。抽出種をLn(SCN)_3・3TOPOとLn(SCN)_3・4TOPOと仮定するとヘキサン系での抽出をうまく説明できる。以上を「Analytical Science」に発表した。溶媒によって抽出種が異なる理由について今後、さらに検討してゆくつもりである。
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