研究概要 |
HPLCによる対掌体の分離分析法のひとつであるキラル誘導体化法の微量分析に対する有用性は良く知られているが,カルボン酸対掌体の分離分析を目的とした場合,誘導体化試薬に反応時間や検出のための発色団等の面で少なからず問題点が残されている。今回,この問題を解消するために,より有用な発色団を有する試薬を使った分析法の確立及び反応時間を飛躍的に短縮できる試薬の開発を試みた。 1.従来よりこの問題に取り組んでおり,すでに選択性の高いダンシル基を発色団として有する光学活性アミン,1-(4-dansylaminophaenyl)ethylamine,の合成法と,それを用いた蛍光検出-HPLCによるアリールプロピオン酸類の分離分析法を既に確立している。この時,本試薬は化学発光検出の適用も可能であり,同検出法の適用による,選択性と検出感度のさらなる向上が期待された。そこで化学発光検出器を購入し,検出のための発光反応試薬,試薬溶液及び移動相の流速,反応時間等の最適化を行ない,HPLC条件を確立したところ,蛍光検出に比べ検出限界を20倍程度改善できることを確認した。これと共に,本法による生体試料中の同化合物対掌体の高感度分離分析法を確立した。 2.上述の方法において,誘導体化のための反応時間は決して速いとは言いがたい。そこでカルボキシル基との反応性が非常に高いトリフルオロメタンスルホン酸エステル基に着目し,同官能基を有するキラル化合物,(R)-2-(2,3-naphthalimino)-2-(phenyl)ethyl trifuluoromethanesulfonateを合成し,カルボン酸対掌体とのキラル誘導体化を検討した。本試薬とアリールプロピオン酸類対掌体との誘導体化反応は10分程度で終了し,反応時間を飛躍的に改善できることを確認した。また,生成したジアステレオマ-の分離も良好であり,検出限界も蛍光検出を用い,数10fmolと従来法に比較しても劣らない高感度検出が可能であった。
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