東京大学農学部付属演習林田無試験地に環境条件の異なる3調査地を設け(林内・林縁・草地)、それぞれに底辺5m×5m、高さ2.5m、メッシュ2cmの鳥が侵入できない網室を設置した。網室内には鉢植えにした高さ約1.8mのマツの苗木を6本づついれた。また、対照区として、各網室の外に同数のマツの鉢植えを設置した。各実験区に7月6日にジョロウグモとナガコガネグモの幼体をそれぞれ24および15匹づつ放して、その後の個体数の変化を調べた。ナガコガネグモはジョロウグモに比べて減少速度が速かったが、いづれの種についても網室の内と外で顕著な差はみられなかった。したがって、鳥類の捕食はこれらのクモ類にとって重要ではないと判断された。トラップにより捕獲した飛翔性の昆虫類の量は、草地>林縁>林内となったが、クモ類の体サイズもほぼこれに対応していた。ナガコガネグモでは生残率でも同様な傾向が見られたが、ジョロウグモでは全く逆の関係にあった。次に、クモの捕食により餌となる飛翔昆虫が減少するかを調べるため、上記の実験のうちでジョロウグモが多く定着した3調査区と、それぞれに隣接したクモのいない場所に飛翔昆虫捕獲用のトラップを設置した。その結果、クモの存在する区では飛翔昆虫類が少ないことが分かった。したがって、ジョロウグモの様な大型の造網性クモは、局所的に昆虫類の量を減少させうることが示された。今回の結果から、鳥、クモ、飛翔昆虫の3者間の関係は前2者間の関係の欠如により成立していなかったが、今後鳥類の繁殖期に当たる春期における同様な実験が必要であろう。
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