ベントスとバクテリアの相互作用のうち、食う食われるの関係に注目して、バクテリアを餌にする水生貧毛類を用いてその摂食特性を調べ、有機物分解の手がかりを探った。バクテリアはPseudomonas fluorescens(JCM2779)を用いた。これを密度10^8 cells・ml^<-1>に調整し、さらに飼育期間中のバクテリアの栄養源としてイ-ストを0.05%の濃度で添加して、5mlの飼育液を作った。水生貧毛類はRhyacodrilus sp.とLimnodrilus spp.を用い、各10個体を実験に供した。飼育は10-12℃の暗条件下で行い、約10日間隔で水生貧毛類の湿重量を測定した。飼育液は、測定毎に新しくして実験を継続した。同時に諏訪湖底泥に滅菌濾過水道水を加えたものを飼育液として、成長の比較を試みた。 110日間の飼育で、水生貧毛類の湿重量は両種ともP.fluorescens添加系で漸次減少した。Rhyacodrilus sp.は7割が実験途中で死亡し、湿重量も平均で69%減少した。Limnodrilus spp.は、死亡個体が2と少なく、湿重量の減少率も27%と低かった。これに対し、諏訪湖底泥系ではLimnodrilus spp.は実験途中で湿重量の増加がみられ、その後実験開始時の値まで減少した。繁殖個体はRhyacodrilus sp.の諏訪湖底泥系でのみ確認され、湿重量の増加を持って6割の個体が繁殖期に入った。繁殖期が終わると湿重量は低下した。以上の結果、バクテリアのみを餌にした場合、水生貧毛類は成長しないことが確認された。これは水生貧毛類の餌の中でバクテリアが占める割合が小さいことを示すと考える。また、Rhyacodrilus sp.はLimnodrilus spp.と比較してP.fluorescens添加系と諏訪湖低泥系での成長に著しい違いがあることから、バクテリアを餌にする割合ががさらに低いことが予想される。水生貧毛類は種によって餌の構成比が異なる可能性が示唆された。
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