研究概要 |
細胞性粘菌における細胞-基質間の接着は、RGD配列を含むレクチンであるdiscoidin Iが細胞外マトリクス分子として働き、細胞表面に存在するECMレセプターである糖タンパク質gp67と相互作用することによっておこると考えられている(Gabius et al.,Cell 42,449-456,1985)。本研究は昨年度の実験に引き続き、gp67の単離・精製を行った。粘菌の膜画分をNP40で可溶化し、5mlのdiscoidin Iアフィニティカラムにかけた。1.5M NaClで溶出すると分子量67kd付近には3本のバンド(gp67a,67b,67c)がみられ、他に100kd,60kd,47kdのタンパク質が同時に溶出されてきた。100kd,60kdのタンパク質はGabiusらの報告と一致していたのでdiscoidin Iと相互作用するタンパク質であるとおもわれるが、彼らはnonspecificなものとしている。47kdは精製バッチ間で差がなく溶出されてくるがヒートショックタンパク質である可能性もある。67kd付近の3本のバンドがRGD配列特異的に相互作用するタンパク質であるか同定するために6残基の合成ペプチドGRGDHDを作製し、ペプチド溶出を試みた。塩溶出を行ったときと同様にカラムに膜抽出物を反応させ、0.5M NaClで十分洗った後0.45M NaClにとかした2.5mMペプチドで溶出した。溶出液を濃縮し電気泳動したところ、分子量のいちばん大きいgp67aが溶出されており、他のタンパク質はほとんど見られなかった。しかしgp67aの溶出量は塩溶出のときと比べ非常に少なく、銀染色で同定できる程度であった。精製したgp67a標品をアミノ酸配列分析にかけたが、量的な問題と他のペプチドのコンタミネーションにより、核酸プローブを合成するに足る情報を得ることが出来なかった。現在cDNAライブラリーをスクリーニングするため、gp67a,b,cの混合物をマウスに免疫しモノクローナル抗体を調製している。
|