研究概要 |
2,4-D存在下でアントシアニン合成をしつつ脱分化的増殖を行う変異ニンジン培養細胞系におけるアントシアニン合成の発現制御機構を解明するため、アントシアニン合成に関与するPAL遺伝子の発現制御を調べた。プロモーター上流域を様々な部位で欠失させたPAL遺伝子をルシフェラーゼ遺伝子に結合し、これをエレクトロポレーション法により導入してプロモーター活性の発現を調べた。その結果、PAL遺伝子の全長約2.4kbp上流から-252bpまでを欠失させたものにおいて、強い発現が見られた。そこでこの細胞から核抽出液を調製し、この領域についてゲル・シフト法により発現調節に関わる因子の存在を調べた。その結果、2,4-Dを含まない培地中でアントシアニン合成を誘導している正常細胞から調製した核抽出液を用いた場合と同じ位置にシフトしたバンドが見られ、これがアントシアニン合成にPAL遺伝子の発現に関与している因子であると考えられた。さらに、この因子をクローニングするために、この変異ニンジン培養細胞から得たmRNAから、正常細胞から得たmRNAをサブトラクトして、アントシアニン合成時に特異的に発現しているmRNA由来のcDNAライブラリーを作成した。ここで作成したcDNAライブラリーの特異性を調べるため、アントシアニン合成の発現制御因子であるmyb遺伝子のDNA結合領域をプローブにしてスクリーニングしたところ、通常のcDNAライブラリーでは10^5クローンに1個の割合でしかポジティブ・シグナルが得られなかったのに対し、ここで作成したcDNAライブラリーにおいては、10^5クローンから100個以上のポジティブ・シグナルが得られ、このcDNAライブラリーにおいてアントシアニン合成時に発現しているmRNAに対するcDNAが特異的に濃縮されていることがわかった。現在、このcDNAライブラリーよりPAL遺伝子発現を制御している因子をクローニングすることを行っている。
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