本研究は裸子植物の花粉管伸長に対するアクチンの役割について解明することを最終目的として、今回は化学固定法および急速凍結置換固定法を用いアカマツ花粉管先端の微細構造の解折を行なった。その結果これまでに以下のことが明らかになった。 1.化学固定法による微細形態観察 (1)花粉管はカロースとペクチンで構成される花粉粒内壁2に由来する。(2)発芽直後の花粉粒内では、花粉管核周辺に多数のミトコンドリアが密集し、ミトコンドリアは花粉管の伸長とともに管先端に移動する。 (3)管の先端部にはゴルジ由来と思われる小胞が密集し細胞膜に融合する。(4)小胞の後方にゴルジ体、ミトコンドリアのほか粗面小胞体が多数存在する。 2.液体ヘリウムによる急速凍結置換固定法による微細形態観察 急速凍結置換固定法では花粉管先端に、化学固定では見られなかった小顆粒の分布する層や一重膜に包まれた構造が観察された。また、ゴルジ体、ゴルジ小胞も化学固定と比べると状態がよかったが、微小管やアクチン繊維は見られなかった。 細胞骨格については固定の方法をさらに改善する必要があるものの、花粉管伸長に重要な役割を持つ小胞体、ゴルジ体、ゴルジ小胞の動態を解折するためには、瞬間的に固定でき、水溶性、脂溶性物質の流亡の少ない急速凍結置換固定法は有効な手段であると思われた。
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