1.今年度は北海道・本州・九州の演習林、農場などを中心に5地点でオサムシ科、シデムシ科、コガネムシ科に属する地表性・食糞性甲虫類の採集を行い、それらの甲虫の体表上から中気門ダニ類21種類を採集することができた。 2.現在までの同定作業により、上記の甲虫類体表上から、ハエダニ科3属10種、ヤリダニ科4属6種、ダルマダニ科1属1種、ヤドリダニ科2属2種、Rhodacaridae科2属2種、合計5科12属21種の中気門ダニ類を確認している。これらのダニ類のうち、ハエダニ科4種、ヤリダニ科3種、ヤドリダニ科2種、Rhodacaridae科2種が本邦初記録であり、ヤリダニ科1種、ハエダニ科3種が新種であると考えられる。また、今回、ハエダニ科1種の飼育を試み、牛糞内の線虫類を餌として飼育可能であることがわかり、未成熟ステージを得ることができた。これまでハエダニ科の多くは、雌を中心とした記載によるもので、幼生、若虫といった未成熟ステージの記載はあまりなされてこなかったが、同胞種と思われる種類もいくつかあり、これらを分類する上で、幼生、若虫の形態形質は非常に重要なものとなる。今後、飼育実験を続けることにより、各発生ステージを揃えることが可能となり、より強固な分類ができるものと思われる。今回採集された新種、初記録種に関しては、記載・再記載の論文を現在準備中である。 3.個体群内個体間の変異に関しては、現在、背板・腹板の形状・彫刻、表面の毛の形態の変異を中心にサンプルの検鏡を行っている。同定に使用されている形態形質の多くはほぼ安定しているものの、かなりの変異もみられ、種内変異に関する詳細な記述が必要と思われる。これらの種内変異に関しては、データがまとまり次第、種の記載・再記載の論文中で記載を行う予定である。 4.地理変異に関しては、形態形質の計測を行っている段階であり、明らかな傾向を見いだすには至っていない。また、採集されたサンプルの数が本州以南で少なく、採集地点によるサンプル数のばらつきがあるため、今後再度、本州以南を中心とした調査を行い、より正確な結果を出したいと考えている。
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