研究概要 |
オニドコロ自然集団におけるDNA変異の分子集団遺伝学的研究の一環として、当該年度は集団内の個体間の遺伝的関係・遺伝子流動を解析するためにマイクロサテライト変異の分析をおこなった。真核生物のゲノム中で2から6塩基の短かいDNAモチーフが直列に反復した配列をマイクロサテライトと呼ぶ。マイクロサテライトはDNAポリメラーゼのスリッページがおこりやすく、反復回数は高度に多型的である。この多型的な領域をPCR法により増幅し、産物の長さの変異を検出して集団解析に用いる方法がマイクロサテライト分析である。 オニドコロゲノムライブラリーをM13ファージを用いて作成し、(CA)_8,(GT)_8,(GA)_8の3種のオリゴマクレオチドをプローブとしたスクリーニングをおこなった。計4000個の組換元クローンの内80個がスクリーニングで陽性となったので、これらを単離し、うち21クローンの塩基配列を決定した。この中でマイクロサテライトを含む8クローンについて、PCRプライマーを合成した。近畿地方より採集したオニドコロ23個体について上記8つのマイクロサテライトをPCR法により増幅し、電気泳動により増幅産物の長さを調査したところ、7つのマイクロサテライト座が高度に多型的で、平均して座あたり6.2対立遺伝子、0.68の平均ヘテロザイゴシテイをもつことがわかった。7座位を通してみると、23個体で同じ遺伝子型の組を持つ個体は無く、この方法により“DNAフィンガープリント"が可能であることも示された。母親と子どもの遺伝子型が判っている時に父親を識別する能力も7座位で98%となり今後花粉を通じた遺伝子流動の研究に威力を発揮すると考える。
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