表面筋電図と筋疲労との関係を単極誘導筋電図において再検討した。本研究では現実生活において問題となる、低収縮強度での疲労性の筋収縮を繰り返した場合の、表面筋電図と筋疲労感との関係を再現性の点から調べた。具体的な実験としては、前腕が回外および半回内、収縮強度13%MVCおよび8%MVCでの肘関節屈筋群による静的筋収縮を5分または10分間の休憩を入れて繰り返した。従来の双極誘導の結果では、表面筋電図の振幅、徐波成分の割合共に、同一疲労感であっても1回目の収縮よりも2回目以降の収縮の方が、大きな値であった。本研究における双極誘導での結果および単極誘導での振幅の結果については、従来の結果と同傾向であった。しかし徐波化に関しては、単極誘導では疲労性収縮を繰り返しても、疲労感との関係は比較的良く保たれた。この徐波化における誘導法間の違いは、運動単位の動員による速波化の影響を少なくするために振幅を要素に入れた分析を行なったことが原因であった。実験結果としては、単極誘導での徐波化を用いることで表面筋電図によって筋疲労の評価が可能であることが判った。ただし徐波化と振幅増大とが別々に生じることが判り、表面筋電図と筋疲労の関係についての従来の推測が成り立たなくなった。また本研究は、以前の結果では疲労と表面筋電図の関係の再現性が無かった原因として、作業姿勢による筋の活動性の変化を考えて行なった実験でもあったが、実験姿勢、収縮強度よりも個人差の影響の方が大きかった。これらのことから、漠然としているが筋電図振幅の変化に関しては、高閾値で活動電位の大きな運動単位の興奮性が高くなっていることが原因であると考えた。
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