本研究では、スメクティック液晶の層に垂直な方向の引っ張り歪みを加えることにより励起される力学的不安定性の現象を理解し、結果からスメクティック液晶の二つの弾性定数である層圧縮弾性率・曲げ弾性率を測定することを目的とした。本研究の研究計画に基づき、まず測定用のセル、測定システムを構築し典型的なサーモトロピック液晶8CBを用いて実際に力学的不安定性の励起が可能であることを確認した後、測定データを解析することにより、2つの弾性定数の温度依存性の測定を行った。これにより、転移点近傍での層圧縮弾性率の変化を精密に測定し、新たなる知見を得ることができた。また本研究費で購入した装置により、光散乱測定用のシステムを構築、研究計画にも記した様に力学測定と同時に光散乱による測定が行える様に改良した。これにより更に緩和時間の測定等、新しい情報を得ることに成功した。本システムは更に、最近話題の反強誘電性液晶の測定にも応用し、反強誘電相・常誘電相・強誘電相相転移についての知見を得た。また研究計画にも示した様に、同時にリオトロピック液晶相についても測定を行い、得られた層圧縮弾性率及び、曲げ弾性率の濃度依存性を得た。この結果は理論的に予測された新しいタイプの膜間相互作用から計算される依存性と良く一致し、この種の両親媒性分子の形成するスメクティック液晶の描像を力学的視点から明らかにすることができた。以上、本研究では研究計画に基づきほぼ実験システムの構築を終了し、さらにこれを用いて幾つかの研究成果を学会等において発表した。
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