研究概要 |
研究実施計画に述べたアニオン置換効果の準備段階として[EDT-TTF(SC_<18>)_2]_2I_3の単結晶化を行った。なぜなら、このLB(Langmuir-Blodgett)膜を取り上げたこれまでの研究からでは、具体的にどのようなEDT-TTF部のカラム構造が形成され、膜の導電性が引き起こされているのが未知であり、この点を明らかにするためには単結晶を用いて詳細な物性測定を行うのが最適であろうと考えられるからである。なお、このようなアプローチはこれまでのLB膜研究においてほとんどなされていない。結晶化はジクロルエタン溶媒中に(TBA)I_3を支持電解質とした電解法を用いて行われ、2muAの低電流下で微小な単結晶を得ることに成功した。X線回析より結晶とLB膜は同じ積層周期を持った同一の構造を有していることが明らかになり、a=5.4Å,b=10.5Å,c=45A90の斜方晶構造を形成しているのが単色ラウエ測定より決定された。さらに直流電気抵抗-温度特性では室温以下で半導体的な振舞いを示すが、310K付近で金属-半導体転移を引き起こしているのが観測された。上記の実験結果のうち、特にa軸、b軸の格子定数の値は、伝導面内の構造が分子内のアルキル鎖部のパッキングによって決定されている事を示唆している。従ってより良質な機能性LB膜を得るには、従来までの分子自体の両親媒性のみを主に考慮したLB膜化の描像を改め、アルキル鎖部のパッキングに従って機能性部がどのように配置せられるかをも考慮すべきであろうと考えられる。
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