研究概要 |
窒化物薄膜を結晶性良く成長させるには、基板結晶表面への窒素活性種の供給が重要である。本研究では、比較的短い寿命の窒素活性種を有効に供給する方法の一つとして、窒素ラジカルビーム源を開発し、窒素系の薄膜成長への可能性を検討した。 作製したラジカルビーム源は、石英製の放電管、アパチャー、高周波(RF)電源、RFマッチングボックス、RFコイルから構成されている。放電管の寸法は長さ300mm,直径15mmで、その先端に取り付けたアパチャーは、厚さが1mmの石英板で、0.6mmphiの細孔を3mmの間隔で9個開けた構造にした。本ビーム源の放電管内の圧力は、0.05から0.1Torr程度になるように設計した。またRF電源には13.56MHzの最大出力300Wのものを用い、高周波誘導結合による無電極放電プラズマを噴出させる方式である。放電管へ導入される窒素ガスは、脱酸素フィルタを通して供給され、また放電状態をモニタするための光ファイバケーブルを取り付けた真空フランジも設置した。また本ラジカルビームは、成長室内の基板表面に対して60゚傾いた方向から噴出され、出射面から基板表面までの距離は280mmとした。 放電管内圧力は0.05から0.9Torr、RF出力は80から100Wでの実験を行った結果、窒素分子の第1正帯からの比較的強い発光(500nmから800nm)が確認された。ただし、第2正帯からの発光(300nmから400nm)は弱く、さらにプラズマ放電条件の最適化およびマイクロ波による励起を検討する必要があった。窒素系の薄膜成長への応対については十分な検討ができなかったが、本ラジカルビーム源による表面処理の効果についても検討を進めるために、走査型トンネル顕微鏡(STM)装置の試作も行い、スパッタ蒸着したチタン薄膜について窒素ビーム処理を行った試料表面のSTM観察を進めている。
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