研究概要 |
高融点窒化物である窒化ボロン(BM),窒化アルミニウム(A1N)に対し京都大学原子炉実験所で中性子照射を行なった。 両試料において光吸収および電子スピン共鳴の実験を行ない共にシグナルを測定した。 照射前にはこれらのシグナルは測定されなかったことにより、中性子照射によって形成された格子欠損に起因するものであると考えられる。 それぞれの試料において光吸収と電子スピン共鳴の焼鈍過程は一致しており、欠陥は中性子照射で生じた窒素空孔に捕獲された電子(F-タイプ中心)と同定した。 BNにおける欠陥の生成量はA1Nよりも三桁大きな値を示すが、これは熱中性子によるボロン原子核の核分裂によって生じる大きな運動エネルギーを持った原子核が弾き出し効果を引き起こしているためと思われる。 電子スピン共鳴で得られるシグナルのg-値は自由電子の値に近いものであった。 線幅は共に数十ガウスである。 A1Nでは線幅の照射量依存性はないがBNでは見られた。 また室温における線形でも相違が見られる。 A1Nではガウス型に近い広がりを持ちBNではローレンツ型を示すが、磁気緩和の過程の違いにより線形が異なったものと思われる。 A1Nにおいてはスピン-スピン緩和(横緩和)が主に線形に寄与しているが、BNではスピン-格子緩和(縦緩和)が支配的であるためと考えられる。 より詳細な情報を得るため、低温での電子スピン共鳴測定を計画している。 なおこの研究結果の一部は日本物理学会1993年秋の分科会・格子欠陥分科に於いて発表された。
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