1.目的 C_2H_2を炭素源とするa-SiC:Hを用いたSno_2/a-SiC:H/Auの簡単なセル構造において、外部量子効率が1を越え100程度まで到達する現象を見い出した。この現象は、a-SiC:Hとの界面に起因すると考えている。本研究の目的は、界面における局在準位の光電子増倍機構への寄与を調べ、その機構を明らかにすることである。 2.実験 プラズマCVD法により不純物添加量[PH_3]を変化してa-SiC:Hセルを製作した。定常特性として温度、印加電圧、光量を変化し、その光電流を測定した。更に、同様の依存性を過渡応答[現有]および周波数特性および位相特性[新規購入、ロックインアンプ]について測定を行った。 3.結果と検討 (1)定常状態 光電流増倍が起こる閾値電圧は不純物添加量の増加と共に減少する。光電流-電圧特性、光量依存性より倍増が生じる範囲とそうでない範囲では、その振る舞いが異なり2つの領域に分かれる。これは、後で述べるモデルと矛盾しない。 (2)過渡特性 過渡特性は温度にほとんど依存しない。通常、光電流の過渡特性は光生成キャリアのトラップとの相互作用によって決定される。従って、増倍下ではその相互作用に温度の項を含まないと考えられる。また、その他の実験結果はモデルと矛盾しない。 4.モデル 光電流像倍のおこる電極はショットキー接触である。この空乏層中に光生成正孔が蓄積され障壁の電界が暗状態よりも強くなる。この電界によって障壁を電子がトンネルし光電流増倍が起こる。過渡特性を支配する空乏層中の正孔は、トラップから直接価電子帯ヘトンネルし放出されると考えると、実験結果を説明できる。
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