半導体及び絶縁体の光学的特性は吸収端近傍に関する研究が主体である。実際、吸収端近傍の振る舞いはバンド構造を知る上での基礎となる。しかし吸収端よりもエネルギーの高い吸収と低い吸収も基礎物性及び応用上重要である。高エネルギー側では固体を形成している結合の結合-反結合状態の分裂幅(ボンドギャップ)を議論することが出来るし、低エネルギー側(サブギャップ)ではデバイスの特性に大きな影響を及ぼす欠陥準位の測定が可能である。 この研究では特に従来あまり測定されていないボンドギャップとサブギャップの測定を行った。ボンドギャップはSiO_xに対して分光エリプソから見積もり、酸素と混晶を形成することによりSi-Siの結合エネルギーを増加させていることがわかった。またSi-Si結合に由来するバンドはxが1.5を越えると急激に減少することが確認された。この傾向はP-CVDとスパッタで作成された試料で類似しているが定量的には異なる。P-CVDで作さされた試料には多量の水素が混入していることから水素の効果を取り入れて現在定量的に解析中である。サブギャップの測定は光熱偏向分光法によって行った。従来この方法ではバルクの欠陥の測定が主体である。この方法が表面の吸収に敏感であることは知られているものの半導体一絶縁体界面に応用した例は稀である。ここではTFTへの応用上重要であるa-SiN_x:H/a-Si:H界面の測定を試みた。この結果a-SiN_<1.7>:Hはa-Si:Hの保護膜として優秀であることが分光学的見地から確認された。さらにa-Si:Hの表面欠陥は表面の自然酸化膜の存在によって増加することも分かった。これらの結果は分光学的に興味有るのみでなくTFTの積層構造の最適化に重要な指針を与える。
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