平成5年度科学研究費(一般研究A)によりマルチチャンネルアナライザーなどを購入し、金属薄膜から発せられる蛍光X線の取り出し角度分布測定を行った。また、実験と平行して薄膜内の電場強度分布を計算し、蛍光X線強度の取り出し角依存性について数値シュミレーションを行った。その結果、取り出し角度依存蛍光X線分析法(Take-off angle-dependent X-ray fluorescence spectrometry;TADXRF)は、次のような特徴を有することが明らかとなった。 1.大気中で非破壊的に薄膜のキャラクタリゼーションが可能である。シュミレーション結果を実験結果にフィットさせることにより、薄膜の膜厚・密度・存在状態・ラフネスなどを求めることができる。 2.解析可能な膜厚の範囲は0nmから数100nmであり、長周期的なラフネス(そり・うねり)は実験結果に大きく影響を与えるが、短周期のラフネス(微視的な凸凹)はあまり影響を与えないことが判った。 3.蛍光X線強度の取り出し角度分析は、一次X線の試料基板への入射角度に大きく依存することが明らかとなった。よって、一次X線の入射角度と蛍光X線の取り出し角度の二つの角度を制御することにより、より厳密な薄膜の分析が可能であることが判った。 4.一次X線の入射角度と蛍光X線の取り出し角度の二つの角度をいずれもX線全反射臨界角度以下に設定することにより、X線の進入深さ、観測深さを数nm以下に限定でき、極最表面の分析が可能である。
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