次世代LSIの配線材料として期待されている銅薄膜の超高純度化・超低抵抗化を目的として、銅イオンビームで銅ターゲットをセルフスパッタする銅薄膜形成技術の開発を行なった。当該年度ではまず、本方式においては形成される薄膜の概要を知るため、基礎的な計算機シュミレーションと実験を行った。 シュミレーションでは通常のアルゴン照射と比較 して銅イオン照射のほうが高いスパッタ率を有することが示された。 実験は、含浸電極型液体金属イオン源から引き出した銅イオンビームを集束して銅ターゲットに照射し、スパッタされた粒子をシリコン基板上に堆積した。このとき、いくつかの異なる基板位置で薄膜を堆積した。成膜装置の概要を知るため、装置パラメータとイオン電流量、成膜速度などの測定を行った。その結果、2"の銅ターゲットでの金属イオンビーム電流が200muA程度、成膜速度は最大で20As^<-1>程度が得られた。 次にいろいろな基板位置における薄膜の純度、構造、電気抵抗率等の差異を調べた。用いた評価手法はラザフォード後方散乱法、粒子線励起X線放出、X線回折、四端子法による電気抵抗率測定などである。結果としては、得られた銅薄膜の電気抵抗は同様な真空度下で真空蒸着により形成した薄膜と比較して約6割程度の値を示した。熱温度よりも高い運動エネルギーをもったスパッタ粒子は基板上での膜の高密度化などを起こし、低抵抗化を実現したものと考えられる。エレクトロマイグレーション耐性の向上のためには薄膜が高配向している必要があるが、配向に関しては本年度の研究では制御するには至っていない。また、イオン源電極に由来すると思われるきわめて微量の鉄系元素が検出された。これらの問題は装置構成、材料を検討することで克服できると考えられる。
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