1.コンピュータにより制御された点滅刺激光呈示装置を作成した。2.ディュ-ティー比が小さく高強度の点滅光を視覚刺激として用いることにより視覚系の非線形性を捉える新手法を確立した。ディュ-ティー比の小さい点滅光は、平均強度が等しく実効的な明るさが同程度の定常光と比較して、点灯中の瞬間的な強度が非常に強くなるので、視覚系の初期過程で点滅光に追従していれば、その過程に内在する非線形性が色知覚に大きな影響を及ぼすと期待され、またそのような効果が以下の実験により確認された。3.上述の視覚刺激を用い視覚系の非線形性が色の3属性、明るさ、色相、彩度に及ぼす影響を点滅光の点滅周波数の関数として測定した。4.実験全体をとおして明らかになったことは、点滅が知覚されなくなる周波数(CFF)以上の周波数では、時間平均の等しい定常光と等価になるというタルボ-・プラトーの法則がほぼ成り立っていること、CFFより若干高い周波数でも非線形効果が若干のこっているが、その効果は微弱であることである。5.明るさ知覚に関しては、30Hz付近で点滅光の効率が落ち、時間平均の等しい定常光と比べて暗くなることがわかった。6.色相・彩度の知覚に関してはCFFより周波数が低下するにしたがって色相はベゾルド-ブリュッケ効果(刺激強度を上げたときに起こる色相のシフト)と同じ方向にシフトし、彩度は長波長領域の刺激光以外は低下することがわかった。7.これらの非線形色知覚現象を統一的に説明するために、網膜上の錐体視細胞の時間応答特性がロ-パス型であり、シグモイド型の非線形性を有すると仮定し、その出力の時間平均が定常光と等価な効果を持つと考えてモデルを構築した。その結果このモデルにより実験データが定量的に説明されることがわかった。8.今後の課題としてこれらの非線形効果が本当に錐体レベルの非線形性のみに依存しているのかを明らかにする必要がある。
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