本研究は、コンピュータなどの端末装置として、3次元画像データの立体像ハードコピーを出力するホログラフィック・3-Dプリンタを開発することを目的としており、ここでは表示される立体像の画質に関する考察および実験的検討を行った。ホログラフィック・3-Dプリンタでは、上下左右の視差を記録するホログラフィック・ステレオグラムの技術を用いており、高画質の立体像を表示することが可能であるが、これまでホログラフィック・ステレオグラムによる画質の限界が明らかになっていなかった。そこで、まず、ホログラフィック・ステレオグラムによる再生像をフレネル型ホログラムと比較することで、両者に記録されている情報についての知見を得た。また、この比較から、この両者の中間的な性質を持つPAS(位相を付加したステレオグラム)を提案し、計算機ホログラムの計算法として有用であるを示した。一方従来の高解像度レーザプリンタを用いて立体像を出力できる反射型ホログラフィック・スクリーンを用いた手法に関して、表示できる画質の限界について考察し、収差を考慮するとフライズアイレンズ法よりも優れた立体像表示能力を持つことを明らかにした。 次に、階調を持つ3次元画像を記録する点について検討し、デジタル拡散板を用いることで高画質の立体像を出力できることを実験的に確認した。さらに、高速出力を実現するため、レンズアレイを用いて並列に複数の要素ホログラムを露光する光学系を開発し、実験を行うことで満足な画質の再生像を得るために必要なレンズアレイの性能について検討を行った。 本研究により、ホログラフィック・3-Dプリンタに用いるホログラフィック・ステレオグラムの立体像再生の能力を複数の点から明らかにし、立体像表示技術の検討を行う際に有用な再生像の画質に関する知見を得ることができた。
|