本研究では、SiC単結晶に新しい青色発光中心を添加して、その発光過程の解明を行う、青色発光の効率向上を目指した基礎データを得た。以下に本研究で得られた主な結果をまとめる。 1.SiC結晶への発光中心のド-ピング (1)SiC{001}面から数度のオフアングルを有する基板を用いることによって、CVD法による高品質SiCのホモエピタキシャル成長に成功した。 (2)CVD成長中に、発光中心となる原子(Ga、Ti)を含む有機金属や塩化物を添加することにより、制御性の高いド-ピング技術を確立した。 (3)発光中心原子の成長層中への取り込み効率は基板面極性に強く依存し、SiC(0001)Si面上の方が、(0001)C面より1〜2桁程度取り込み効率が高い。したがって、10^<18>cm^<-3>程度のド-ピングを行うためには、Si面を用いるのが有効である。 2.発光スペクトルの分析と発光過程の解明 (1)N、およびGaをドープしたSiCのフォトルミネセンス分析から、Gaが深いアクセプタとして働き、10〜100Kの低温で強いD-A(NドナーGaアクセプタ)ペア発光を示すことを明らかにした。発光スペクトルのピーク位置は2.9eV(430nm)付近であり、Gaは紫青色の発光中心として有望である。 (2)Gaドープ成長層のフォトルミネセンスは、100K以上の高温でD-Aペア発光から自由電子-アクセプタ発光の過程に遷移する。このスペクトルの分析から、Gaアクセプタの準位が267meVであることを明らかにした。 (3)Tiドープ成長層は2.79eV(444nm)に零フォノンピークを持つ青色フォトルミネセンスを示す。このピークの温度依存性、励起強度依存性、時間分解分析によって、TiがSiC中で等電子トラップとして作用することを示した。また、励起子の束縛エネルギーが475meVと大きいことが判明した。 今後は、発光デバイスの製作や、他の材料とのヘテロ接合の活用が必要である。
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