本研究の目的は、半導体レーザーから従来の手法では得られなかったハイピークな超短光パルスを発生することにあった。既に提案したQスイッチモード同期法の適用により本目的を実現可能なものにできるという数値的見積もりのもとに実験を行った。しかしながら、発生したパルスは部分的に数ピコ秒の幅のものが得られたものの、多くの場合不安定な多パルス発振となってしまい、ハイピークなシングルパルスは得られなかった。これは、数値計算時に考慮しなかった半導体レーザー内の利得飽和の影響によるものと考えられる。したがって、提案したQスイッチモード同期法は、エルビウムドープファイバーレーザーに対して適用し、その有用性を実証するために現在準備中である。これに並行して、今回本申請により購入した光学部品を用いて半導体レーザーのチャープ、および利得飽和特性を詳細に調べた。これらは、上記目的の半導体レーザーからの超短パルス発生に深く関与する事項である。直接変調や、モード同期を施された半導体レーザーからの光パルスは、特有のパラメータである旋幅増大係数(alphaパラメータ)に強く依存して、光パルス内に周波数チャープを含む。チャープは、位相情報であるためにその測定が困難であるが、応用上必要とされる情報である。今回、強度位相相関法((IPC method)と名付けたalphaパラメータ価の見積もり法を提案し、実験的にその有用性を示した。また、これに関連して、パルスの時間帯域幅積とalphaパラメータ値およびダウンチャープ量とalphaパラメータ値の間に成立する関係式を数値計算によって経験的に見出し、実験的に確認した。これらの結果は、国際会議において発表される予定であり、関連雑誌に現在投稿中である。利得飽和を引き起こすパラメータである利得圧縮係数に関しても、その測定法の提案、実証を現在行っている。
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