紫外波長可変固体レーザーは紫外有機色素に代わる媒質として期待され、1980年ごろに報告されたCe:YLF、Ce:LaF3などが知られているのみであった。 本研究では、共同研究者のロシア共和国のDubinskii教授らにより開発された新紫外波長可変レーザー結晶のCe:LuLiF4の特性評価と、Baryshinikov教授により育成された未知の結晶であるCe:YAPとCe:YSOについて評価を行った。 まず、Ce:YAPとCe:YSOについてであるが、380-420nmに強い蛍光を発することが確認され、しかも、実用性の高いXeClエキシマレーザーでの励起が可能であることが解った。そこで、利得測定を行いレーザー媒質としての可能性を検討したが残念ながら、励起状態では吸収が生じるためレーザー媒質としては機能しないことが明らかになった。 新紫外波長可変レーザー結晶のCe:LuLiF4に関しては超短パルス増幅媒体としての評価を行った。Ce:LLFは、300-345nmの広い蛍光を持ち、KrFエキシマレーザー励起で可能が可能である。利得測定の結果、323-335nmで利得が確認された。本研究で初めて明らかになったこの広い利得帯域幅は、超短パルスの発生・増幅にも利用可能である。しかも、最大単光路利得は5.5倍であり、飽和増幅エネルギーも色素レーザーの50倍にも達している。 また、共焦点4光路増幅を構築したところ約100倍(透過光比)の利得が可能であった3。また、ピコ秒チタンサファイア増幅のパルスとQスイッチYAGレーザーの第二高調波の和周波による325nmのピコ秒パルスを同様の増幅器で増幅したところ50倍の利得(透過光比)が得られた。これにより紫外短パルスの直接増幅が固体レーザー媒質で初めて実現された。
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