◎研究代表者は、電子・通信工学の分野で盛んに研究、利用されている弾性表面波を新たな応力センサーとして注目し、それを利用した電着層の内部応力測定法についての研究、開発を平成4年度より進めている。平成5年度は測定対象として新たにセラミックコーティング材料について測定を行うとともに、非破壊測定法として研究代表者らが開発を進めている白色X線による測定法を組み合わせたハイブリッド手法についても検討した。 1.表面波の励振用および受信用として使用している「くさび型トランスジューサ」の形状、加工精度、試験片への装着方法などによって測定データの精度、再現性が大きく変化する。これらの要因について検討を行ったが、データの精度についてはくさび角の加工精度、データの再現性についてはくさび型トランスジューサの試験片装着面の表面粗さおよび試験片への装着圧力が主な原因であることが明かとなってきた。これらについては引き続き定量的検討を行う。 2.オーステナイト系ステンレス鋼SUS316に窒化チタンTiNをスパッタリングにより3mumコーティングした試料を製作し実験を行った。弾性表面波を用いてコーティング層表面の残留応力測定を行うためには、TiNの平板状の無ひずみ試料が零応力較正のために必要である。無ひずみ試料の製作のために、コーティング試料を真空炉中で900℃-2hour保持後徐冷し焼きなましを行ったが、TiN層に剥離を生じたため測定には使用できなかった。無ひずみ試料の製作方法について、現在、検討中である。無ひずみ試料が製作でき次第、弾性表面波による測定を行う。 3.同一試料に対して白色X線による測定を行った。その結果、TiNコーティング層には圧縮の残留応力、SUS316基材にはTiNとの接合界面に圧縮の残留応力および接合界面近傍に応力勾配が測定された。残留応力の釣合い条件から基材には引張り残留応力の存在が予想されるが、今回用いた測定方法では確認できなかった。急な応力勾配に対応した測定法の開発を検討している。
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