強磁場下における構造材料の熱衝撃破壊挙動解明を目的として、基礎的研究を行った。まず最初に、核融合実験炉、実証炉の第一壁候補材料であるマルテンサイト系ステンレス鋼(HT-9)の磁気破壊力学解析を行った。核融合炉の場合、環境磁場が十数テスラと非常に高いため、磁性材料は磁気的飽和状態となる。また、熱衝撃負荷により生じる曲げ応力を考慮し、板面に垂直な一様磁場内における両端単純支持の貫通き裂を有する磁気的飽和状態のHT-9平板を考え、曲げモーメントが作用する場合の磁気弾性問題を理論解析した。磁場は、HT-9の飽和磁場である1.6テスラとし、数値解析を行い、磁場内における破壊強度を示すパラメータである磁気モーメント拡大係数を求めた。磁場の増大に伴い磁気モーメント拡大係数は磁場が作用しない場合に比べ、き裂長さと板厚の比が5、10の場合それぞれ、12.6%、15.6%増大する。 さらに、磁気弾性相互干渉に関する理論解析の妥当性を検証するために、磁場内における平板の曲げ変形実験を行った。磁場発生装置は、東北大学金属材料研究所附属強磁場超伝導材料研究センターの超伝導マグネットSM-3(室温ボア径220mm 、最大磁場8テスラ)を用いた。磁場中心において試験片の一端を固定し、他端に負荷を加えた。磁場の増大に伴いたわみは増加し、板長さと板厚の比が大きい程顕著な磁場の影響を受ける。実験結果と理論解析結果を比較したところ、両者は良く一致した。
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