1.R実験の確立 R曲線実験の治具に合わせて治具に挿入できる細い径の対物レンズを準備して、顕微鏡下で微小き裂の進展が観察できるようになった。また、スパーインポーズボード、VTR、CCDカメラにより観察結果をき裂進展の画像と荷重・応力の同時記録も可能になった。コンピュータから記録、停止などのコントロールもできるようになった。これらのシステムにより長時間のR曲線実験も可能となった。 2.セラミックスのR曲線挙動 アルミナ、窒化ケイ素について研究計画に沿って実験を行い、両材料にR曲線挙動が観察された。 次に種々の大きさの荷重によりビッカース予き裂を導入し、き裂の進展挙動を観察したところ、圧こん予き裂の大きさによりR挙動が異なる結果が得られた。このことは、圧こん導入による残留応力の影響が、無視されていることによるものと考えられる。つまり、予き裂形成時の残留応力は、消失するものではなく、ある程度き裂が開口しても影響している。 この影響を消失するには、圧こんを除去することが、最も的確な方法といえる。そのために本研究では、圧こんを除去した予き裂を形成を試みた。しかし、予き裂前縁は半円表面き裂ではなく、圧こん下にき裂のない、パルムクイスト型のき裂であり、R曲線実験には適さないものだった。表面除去後にパルムクイストき裂を安定成長させて半円にするように実験したが、即時破断し理想的き裂の作製は困難であった。R曲線の時間依存の研究を行うに当たっては、今後、圧こんの残留応力についての検討が必要である。
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