高精度・高剛性の超精密旋盤を使用し、切込み量100〜500nmの微小領域での単結晶シリコンの切削実験を行い、延性モード切削機構を考察した。また、魔鏡トポグラフによるシリコン切削面の評価の可能性を検討した。 1.単結晶シリコン切削実験 切込み量500nm以下の条件ではダイヤモンド切削によっても鏡面加工が可能であることが確認された。しかし、詳細に観察すると切削面性状は切込み量に大きく依存し、切込み量100nmでは、脆性破壊を伴わない延性モード切削が実現され、切込み量300nm以上では微小クラックが発生し、延性・脆性両モードの切削となることがわかった。さらに、透過型電子顕微鏡(TEM)による切削面の断面観察から、切削による加工変質層は表層の非晶質層とその下の転位層とからなっており、切削により表層は相変態していることをはじめて明らかにした。また、内部の変形は金属材料と同様なすべりに起因していることがわかった。 2.魔鏡トポグラフによるシリコン切削面の評価 魔鏡トポグラフの光学系を設計し、本測定法によるシリコン切削面の評価の可能性を検討した。測定のための光源にはHe-Neレーザを使用し、スポット径をひろげコリメートした光を試料に平行光として照射されるようにした。試料照射時点でのスポット径は約20mmとした。その結果、表面あらさ20nmRmaxのシリコン切削面の微小な凹凸(カッターマーク)に対応した投影像(魔鏡トポ像)が明瞭に観察されることを確認した。また、切削面のうねりに起因すると思われるコントラストも魔鏡トポ像に認められた。今回の実験では、魔鏡トポ像に現れるコントラストと実際の切削面性状との間の詳細な解析を行うまでには至らなかったが、表面あらさ20nmRmaxという高精度な表面の微小な凹凸を投影像としてとらえることが可能であることが明らかとなった。このように、比較的単純な光学系により高精度な評価ができることから切削面のインプロセス計測として非常に有効な手法となることが確認できた。
|