研究概要 |
硬脆材料を切断するためのダイヤモンド電着ワイヤ工具の高能率化・長寿命化を図ることを目的として,スパイラル状にダイヤモンド砥粒を電着したチップポケットを有するワイヤ工具を考案した.そこで,今年度の研究においては,ダイヤモンド砥粒を電着する際に遮蔽板を用いることによりワイヤ工具を作製し,それの加工特性を一連の実験を通して検討した結果,以下の事柄が明らかとなった. (1)ダイヤモンド砥粒をワイヤ表面に電着するためのメッキ液として高速度スルファミン酸ニッケル浴を用いることにより,ワイヤ工具作製速度が5.3倍までワイヤ工具作製速度が向上した. (2)ワイヤ工具の引張強さは,遮蔽板を用いてメッキ層の厚みを一部減少させているために若干減少する結果が得られた.また,ねじり強さは通常のワイヤ工具に比して約3.2倍向上した. (3)ピッチ35mmのチップポケットを有するワイヤ工具による加工能率(1分当たりの切断深さ)は通常のワイヤ工具の加工能率に比して約30%程度増加し,ワイヤ工具が破断するまでの加工可能時間もワイヤ工具のねじり強度の増加に起因して1.6倍まで向上した.また,加工時間に対する加工能率の減少量も切り屑の排除や加工液の流入が促進されるために通常のワイヤ工具に比して格段に向上した. (4)チップポケットを有するワイヤ工具では,平均ワイヤ直径を通常のワイヤ工具に比して小さくできるために切断代が減少することを明らかとした.また,ソーダガラスを工作物として用いた場合,切断面で生じるチッピング量は通常のワイヤ工具との差はほとんど見受けられなかった. また,チップポケットを有するワイヤ工具の上記とは異なった効率的な作製法として,テフロンコーティングしたワイヤ工具にダイヤモンド砥粒をスパイラル状に電着する方法も考案し,ワイヤ工具の試作を行った.
|