近年、「水潤滑セラミックス軸受」の可能性が一層高まっている。これは、水をセラミックスの潤滑剤としてもちいることにより摩擦面に生じる特殊な反応(トライボケミカル反応)の結果、摩擦面が平滑化され、これにともない非常に低い摩擦係数が得られていることに起因している。 本研究ではこの様な低摩擦係数を引き起こすと考えられる水中における摩擦面平滑化の機構を解明するため、環境制御型電子顕微鏡(ESEM)を用いた高湿度雰囲気中におけるセラミックス磨耗過程(摩擦面の変化)のその場観察装置を製造した。 この装置を用いた実験及び分析により高湿度雰囲気中における単結晶シリコンの磨耗機構に関して以下の結果が得られた。 1)高湿度におけるシリコンの磨耗形態はPloughing、Nano-film spalling、Fractureの3種類が発生し、湿度と荷重によりその発生領域が分類された。 2)Ploughingの磨耗形態では、荷重の増加にともない摩擦係数が減少し、約0.22から0.06に変化することが明らかにされた。 3)Nano-film spallingの磨耗形態では、比較的高い摩擦係数(約0.22)を示した。また、この時の磨耗粒子はアモルファスのシリコン酸化物であることが確認された。 4)Fractureの磨耗形態では、摩擦係数の振動が最も大きく、磨耗粒子は結晶態であることが確認された。
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