研究概要 |
本研究の目的は,セラミックスの摩耗粒子の生成過程のその場観察としう新しい実験手法と理論解析により,セラミックスの微視的摩耗機構を系統的に解明することにある.この目的達成のために,走査型電子顕微鏡(SEM)内摩擦システムを制作し,これを用いて炭化けい素,窒化けい素の2種類のセラミックスの摩耗実験を行った.さらに,実験結果に基づき3つの微視的摩耗形態をモデル化し,それらの発生条件の理論解析を行った.本研究で得られた主な研究成果は以下の通りである. 1.セラミックスの摩耗形態は,最も激しい巨視的脆性破壊型摩耗であるflake formation,真実接触域で生ずる微視的脆性破壊型摩耗であるpowder formation,脆性破壊に起因しない極めてマイルドな摩耗であるploughingの3種類に分類することができる. 接触論と線形破壊力学に基づく解析により,flake formationの発生条件は,Pmax√<R>max/K_<IC>≧7/(1+10mu)で与えられる.Sc=Pmax√<R>max/K_<IC>と定義すると,Scはセラミックスの摩耗機構を支配する重要な新しい無次元数となる.ここで,Pmaxはヘルツ最大接触圧力,Rmaxは最大あらさ,K_<IC>は破壊靱性,muは摩擦係数である.実験結果は,理論と極めて良く一致することが確認された. 接触論と線形破壊力学に基づく解析により,powder formationの発生条件は,Hv√<R>max/K_<IC>≧5/((1+10mu)で与えられる.Sc^*=Hv√<R>max/K_<IC>と定義すると,Sc^*はセラミックスの摩耗機構を支配する重要な新しい無次元数となる.ここで,Hvはビッカース硬さである.実験結果は,理論理論と極めて良く一致することが確認された.
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