本研究は、機械設計向きインテリジェントCADの開発において一番重要なポイントである、設計知識の構造について知見を得ることを目的としている。従来の設計知識に関する研究では、知識の抽象と具体、一般と特殊、といったレベルが混同された結果、例えば、極めて抽象的なレベルでの設計過程モデル理論と特殊かつ具体的なレベルでの設計方法論が同じ土俵で議論され、その結果、概念の混乱が生じているという問題点がある。 我々は、実験的な設計研究の一つの手法として、実際の設計行為をビデオやCADツールなどを利用して記録し、プロトコル解析を行うことで設計過程や設計知識を分析する申設計実験を既に開発している。この結果、例えば計算可能な設計過程モデルを構築することに成功している。本研究では、この時、得られたプロトコルデータの再解析を行い、設計知識が記述されているレベルを明確にすることで、設計知識が持つ構造を解明することを方針として研究を実施した。 具体的には過去の設計実験のプロトコルデータについて、主として自然言語理解の観点からの解析を行った。これによって、各プロトコルから設計知識の単位知識を取り出し、次にこの単位設計知識について、それが抽象と具体、一般と特殊というような観点でどういうレベルの知識であるかを整理した。次にそれぞれのレベルでの知識について相互の関係を分析した。この結果、具体的なレベルでの設計対象物に関する知識と、設計過程に関する抽象的、一般的なレベルでの設計過程知識とを分離することができ、その両者を結び付けるものとして特に設計対象物に関するモデル(例えば幾何モデルやFEMモデル等)を操作する知識が重要であることが分かった。
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