汚染物質(アルミナ粉末)を含む潤滑油を用いて、高速ジャーナル軸受の摩擦摩耗試験を行ない、発生した摩耗粒子を潤滑油からフェログラフィーを用いて採取し分析を行なった。また、走査電子顕微鏡及びX線分析装置を用いてその形状及び組織を調べた。特に、球状摩耗粒子に注目して実験を行なった。尚、実験条件及び材料の組合せ等は、実機ジャーナル軸受の運転条件に基づいて決定した。 得られた結果は次の通りである。 1.摩擦係数は、コンタミ粒径が大きいほど大きかった。コンタミ粒径が、最小油膜厚さより小さい場合(コンタミ粒径3mu)、コンタミ濃度が増加しても、摩擦径数はほぼ一定(〜0.05:混合潤滑)であった。最小油膜厚さより大きい場合(コンタミ粒径8mu)、コンタミ濃度の増加に対して、摩擦係数は〜0.08(混合潤滑)から0.15(境界潤滑)まで増加した。 2.パッド及びジャーナルの摩耗量は、コンタミ粒径が大きいほど大きく、コンタミ濃度の増加に対してほぼ直線的に増加した。また、ジャーナルの摩耗量がパッドの摩耗量よりも大きかった。 3.コンタミ粒径3muの場合、数ミクロン以下の小さな黒色粒子が多数発生したが、切削状粒子は発生しなかった。 4.コンタミ粒径8muの場合、15mu以下の薄い粒子が多数発生し、切削状粒子も比較的多く発生した。 5.すべり速度9.5m/s、摩擦係数0.02〜0.15の作動条件において、球状粒子は多数発生しなかった。 従来の研究では、球状粒子は摩擦熱による局所的な溶融、凝固過程で発生すると言う説が有力であった。しかし、高速下での混合潤滑状態(局所的な接触状態)においてさえ、球状粒子は多数発生しなかった。この結果は、球状粒子の発生は、別な要因(電食:電気的な接触、凝固)によるものと推測され、更に今後の研究が必要である。
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