研究概要 |
熱機関における希薄燃焼限界はミスファイヤによってではなく,サイクル毎に生じる燃焼変動によって事実上制限されている.そこで,この燃焼変動の原因を明らかにすることは重要であり,著者はこの変動の原因として燃焼前のガス流動のサイクル変動が大きな役割を果たすものと推定し,ガス流動のサイクル変動現象の解明を実験と計算の両面から行ってきた.昨年度までにこのサイクル変動を定量的に予測するモデルを提案し,実験値との比較によりモデルの妥当性の検証を行った.昨年度の結果から計算初期値が計算結果に与える影響を検討する必要があることが明らかになったので,本年度は初期値を変えて計算を行ない,実験値と計算値を比較した.まず乱れ強さの初期値が乱れ及びサイクル変動に与える影響を調べた.この結果,実験値,計算値共に初期乱れ強さが大きいと乱れの減衰は早く,サイクル変動強さも減衰が早いことが示された.次に乱れのスケールの初期値の影響を調べた.スケールが大きい場合の方が,乱れは減衰しにくく,サイクル変動は圧縮行程中に増加することが示された.さらに初期体積効率の影響を調べてみた.この結果,乱れもサイクル変動も殆ど影響を受けないことが明かになった. 以上の結果から,本モデルは定量的に実験値をほぼ予測できることが明らかになった.また,熱機関で問題となる乱れとサイクル変動の分離を行う方法についても理論的に提案することが出来た.今後は,本モデルに燃焼モデルを組み合わせ,燃焼変動を予測するモデルを開発することが必要である.
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