本研究では、平面スピーカを音響アクチュエータとして平面せん断流中の組織構造火炎の熱焼過程を能動的に制御し、周期性を卓越化させて位相平均化手法の適用を容易にすることにより、熱焼計測におけるアクティブ熱焼制御の有用性を確かめることを目的とした。そのため、音響的に励起された火災に対して、電気的に補償された微細線径の熱電対(R形、phi50mum)を用いた変動温度測定、および石英ガラスファイバと分光器を組合せた光学系を用いた化学発光測定(CH:431.2nm、OH:306.3nm)を行い、それぞれの二次元および三次元の位相平均分布を求めた。そして、光学的および視覚的観察結果との比較検討を行った。得られた結果は以下のように要約することができる。 (1)温度および火災発光の二次元位相平均分布から、可燃組織渦の形成と周囲流体の巻き込みの様子、および火災の発生・成長・消滅の1サイクルの挙動が明らかにされた。 (2)三次元位相平均温度分布の挙動から、平面混合層に見られるリブ構造に対応すると考えられる三次元構造が観察できた。 (3)これらの結果に基づいて、スピーカによる微少速度変動の付与→K-H形不安定性による高い周期性をもつ可燃組織構造の形成→流れとの干渉による着火および発熱の位相の決定→熱焼に起因する圧力・速度変動による初期せん断層へのフイ-ドバック、という定性的な励起機構が明らかにされた。 (4)したがって、周期性性質を有する火災の熱焼計測における有用性はもちろんのこと、アクティブ熱焼制御が火災と流れおよび音との相互干渉の過程を調べる場合にも効果的で、乱流熱焼機構の解明にも役立つ。 なお、以上の本研究の成果はすでに2編の論文として発表され、高い評価を得ている。
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