研究概要 |
高温既燃ガスと接触した予混合気の着火過程を,圧縮性,対流,粘性,熱伝導,物質拡散,詳細な化学反応を考慮した数値計算を用いて調べた.予混合気として,水素-空気混合気(300K)を採用した.予混合気と接触させる際の既燃ガスは平衡状態にあると仮定し,その組成は化学平衡計算によって求めた(平衡計算ではNewton法を使用).粘性,熱伝導率・拡散係数などの輸送係数は,分子運動論から導いた理論値を用いた(Hirschfelder).素反応は17個の正・逆反応を考え,その反応速度はWestbrookのデータを用いた.また,外力,体積粘性,圧力勾配拡散,Soret効果,Dufour効果は無視した.計算スキームとして,陽的MacCormack法を採用した.格子数は100とし,その間隔は0.1(mm)とした.また,時間間隔は計算を安定に実行するために10(nsec)とした. 高温既燃ガスとの接触による予混合気の着火の計算では,既燃ガスの温度を変化させて計算を行い,各々の温度における予混合気の着火遅れ時間を求めた.予混合気のみの着火の場合と比較すると,高温度域(>1200K)では既燃ガスとの接触による着火の場合の方が着火遅れ時間は長いが,低温度域になるとその差はほとんどなくなる.水素-空気予混合気のみの着火では,低温度域におけるみかけの活性化エネルギーは大きくなり,温度が低くなるにつれ着火遅れ時間は極端に長くなる。一方,既燃ガスとの接触による着火の場合では,全領域において活性化エネルギーの大きな変化はみられない.これは既燃ガス中に含まれている活性化学種が着火過程に影響を与えているためと考えられる.
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