回転水中紡糸法における冷却過程のシュミレーション実験を行った。溶融金属ジェットを模擬したB熱電対素線(直径0.5mm)を回転軸に円弧状に保持し、この素線を直層通電加熱した後ステッピングモータにより急激に回転し回転ドラム(内径500mm)の内側に形成された水槽中に所定の速度で突入させ急冷した。細線が水槽に接する直前に加熱用電源を切り、熱電対の起電力をアナライジングレコーダで測定した。細線の表面温度および熱流束は温接点の半径方向温度分布による面積平均の熱起電力が測定値に一致するように半径方向一次元非定常熱伝導方程式を差分法で解くことにより求めた。細線の入射角phi=21°、初期温度T_<f0>=800〜1200°C、細線の周速v_f=3〜9m/s、水槽の周速v_<w0>=5〜9m/sで実験を行い以下の結果を得た。 1.白金細線を用いた水平細線の浸漬急速冷却実験の結果と比較して、本実験結果では水槽突入後の熱流束の上昇速度はかなりゆるやかである。これは細線の後流に形成される空気のシート(キャビティ)の影響も一因と考えられる。しかし、シート崩壊後にも熱流束の急激な上昇は認められない。 2.熱流束は、細線の水槽突入後しばらく(v_f=6.0m/sで約6ms)は水の速度にかかわらずほぼひとしいが、その後は水の速度とともにやや増大する。 3.熱流束はv_f=6および9m/sでは時間と共に単調に増加するが、v_f=3m/sでは極大値を待つ。 4.水槽内の同じ位置で比較するとv_f=が小さいほうが熱流束は大きい。 5.T_<f0>が高いほうが熱流束は高い傾向にある。 6.本実験で得られた熱流束の最高値は約2.2×10^7W/m^2である。 今後は熱流束の上昇速度が小さい原因を究明すること、細線の水槽突入時と得られたデータの対応を明確にすること、および入射角度の大きなデータを得ること等がまず必要と考えられる。
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