研究概要 |
本研究では振動自由度が無視できないセミクローズド制御された位置決め機構の高速アクセス・位置決め制御を対象にして,精密位置決め過程での位置決め機構の挙動を考慮したアクセス制御をすることによって,精密位置決め制御の高速化を図り,総合的に見て高速なアクセス・位置決め制御を実現する方法を明らかにすることを目的とした. 本研究ではまず実験および計算機シミュレーション結果から,位置決め過程における行き過ぎの原因の一つとして減速過程における振動モードの変位があることを示し,従来のフィードバック制御法では行き過ぎ量を本質的に抑圧できないことを示した.また位置決め過程における行き過ぎを定量的に示し,これまでの制御手法で行き過ぎが整定幅以内となる条件を示した. 次に位置決め機構のアクセス時間短縮のためアクセス過程終端の整定過程に目標速度と駆動力を位置の関数として与えるフィードフォワード・フィードバック併用制振加速度制御を適用することを提案し,本手法の有効性と適用条件を実験および計算機シミュレーション結果で示した.得られた結論を以下にまとめる. 1.制振加速度制御によって振動モードを抑圧することにより位置決め過程での行き過ぎを大幅に低減することができる.この結果減速過程の負の加速度を大きく保ったままアクセス過程から位置決め過程への切り換え位置を整定幅まで接近させることができ,整定時間が大幅に短縮できる.本手法により本研究で作成した位置決め機構単体の最低次固有振動数762.5Hz,位置決め制御のサーボ帯域355Hzの高速・高精度位置決め機構では,0.5トラック手前から整定までの整定時間を0.6msにすることができた. 2.整定過程に制振加速度制御が有効に適用できる位置決め機構の最小の固有振動数を負の加速度の大きさ,制御切り換え位置および整定幅の関数として明らかにした. 3.本手法は固有振動数や摩擦力に見積り誤差がある場合にも比較的高いロバスト性をもつ. 4.理論的に予測される制振効果を得るためには最低次振動モードの固有振動数の20倍程度のサンプリング周波数が必要である.
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