研究概要 |
1.受動形ジャイロ制振機構の数値最適化では,機構的な非線形性により励振トルクが強くなると線形近似の誤差が増加する問題がある。そこで,本研究ではまずフォッカープランク方程式を導き,ガラーキン法による定常応答解析に基づき主系角分散を最小化するパラメータ最適化問題としての定式化を採用し,ジンバルばねとジンバル減衰の設計について調べた。外乱が弱い場合,計算精度はかなり高いことが判明した。しかし,非線形性の考慮が効果的な強い外乱においては同時に誤差が増加し,精度を保つため項数を増やすと連立方程式の次数が高くなり過ぎるなどの問題が生じた。しかし,実用的な精度の領域においても線形近似設計と比較して主系角分散が約15%減少する場合が認められた。 2.モンテカルロ最適化に関連していえば次のような中間結果となっている。成形フィルタを用いる場合など,拡大系が複雑になると決定論的な方法では解析や最適設計が困難になる。擬似乱数によるシミュレーション,すなわち、モンテカルロ法で分散値を推定すると,決定論的な手法のように計算量が激増することはなく,穏やかに増加するに過ぎない。そこで,最近、新たな最適化手法として注目集めている遺伝的アルゴリズムとモンテカルロ法を組み合わせることにより一種のモンテカルロ最適化を実現し,上記の解法と同様に受動形ジャイロ制振機構の不規則励振のもとでのパラメータ最適化に適用した。その結果,同一の計算条件において同等の分散値を示す最良解が得られた。解法の特長として,(1)外乱のつよさに解析上の制約がなく,(2)トランスピュータなどの並列計算機による計算効率が高いところが確認された。遺伝的アルゴリズムは(3)組合せ論的な制約が扱い易く,本解法は一般的な最適設計問題への適用可能性も高い。
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