従来の逆システムを用いた制御においては、モデリングやパラメータ推定の誤差や外乱の影響及び負荷の変動によるパラメータ変動に弱く、安定な制御系が構成できない欠点があった。また、高分子圧電素子材料の応力-歪曲線にはヒステリシスが存在し、この非線形性のため余り良い先端の位置きめ精度や高速応答性は得られなかった。そこで本研究は、安定化逆システムによる外乱抑圧制御を利用した新しいフレキシブルマイクロマニピュレータの高速・高精度先端位置ぎめ制御法を確立することを目的とし、以下のような研究を行い、いくつかの有用な知見を得た。 安定化逆システムをもちいたフレキシブルマイクロマニピュレータの高速・高精度先端位置ぎめシステムの設計方法を確立するために 1.現在までに、研究代表者らが見いだした積層板理論を用いたマイクロマニピュレータモデルにより制御対象をモデル化し、外乱推定器を用いたフィードフォワード補償の外乱抑圧効果について、シミュレーションによりその周波数特性やコントローラの制御性能に対するサンプル周期やパラメータ変動に対する影響について検討し、制御アルゴリズムを設計した。 2.上記の結果に基づき、圧電素子を用いてマイクロマニピュレータを製作し、現有のパーソナルコンピュータにA/D・D/A変換器を付加したものを用いて、ソフトウェア的に外乱推定器を模擬した逆システムを構成し、レーザー変位計によって先端位置を計測し、フィードバックさせる、先端位置ぎめ実験を行い、従来の逆システムのみのものと比較した結果、外乱抑圧特性に優れた制御系の設計方法であることが確認された。
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