研究概要 |
1.臨床データおよび動物実験データの解析 頭蓋内脈波は脳動脈圧の変動にともなって発生すると推定されている.脳動脈圧および頭蓋内圧の臨床データおよび動物実験データに線形振動解析および非線形シミュレーションを適用して解析した.頭蓋内を一つの振動システムと考えて,脳動脈圧と頭蓋内圧との振動工学的関係を表現する最適な数学モデルの推定を行い,さらに,推定された振動モデルのシステムパラメータを求めた.その結果,以下のことが明らかになった. (1)頭蓋内圧が高くなると,コンプライアンスは低下し,等価質量は上昇する。 (2)頭蓋内圧が異常に亢進すると,頭蓋内圧を正常な値に戻してもコンプライアンスは低い値となり,脳組織が変質したことを示す. (3)頭蓋内部に傷害が発生しても,頭蓋内圧が正常な値にもどると等価質量は回復する. 2.頭蓋内の力学モデルによる実験 頭蓋内に模擬した力学モデルを製作し,これによる振動実験を行った.モデルは,頭蓋骨に相当する容器,脳実質に相当する弾性体,血液および随液の循環系に相当する流体などから構成され、髄液の流れによる質量効果をもたせるための絞りおよびシリンダとゴムシートによって実現する非線形ばねを含む構造とした. この結果,頭蓋内圧脈波の発生機構を力学モデルでシミュレートすることの有用性が示された。
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