実世界において立体の造形を行う場合にはカッターナイフやへら等の道具を用いるのが一般的である。これらの物はいづれも棒状の把持部をもっており、作業時にはこの把持部を介して反力を感じる。このような観点から本研究では棒状の把持部を持つ6自由度のフォースディスプレイの開発を行った。この装置は仮想空間の中で造形作業を行う際ら反力を呈示することを主たる目的としている。人間の手は並進の動き方が3つと回転の動き方が3つあり、合計6つの自由度をもっている。これだけの自由度を関節が直列的につながった通常のマニピュレータで実現すると手先の方の関節の重量を根元よりの関節が支えなければならないため、全体としては大がかりなハードウェアになる。そこで本装置ではパラレルメカニズムを採用することにより、マニピュレータ全体の大きさと重量を小さくしている。具体的には棒状の把持部の両端をそれぞれ3自由度のマニピュレータで支えるという機構を採用している。合計の自由度は6になるため、把持部に3軸の力と3軸のトルクを生成することができる。この機構の特徴は6つのモータの自重がいづれも手の負担とならないことである。空中の運動部分の重量が軽いことはマスターマニピュレータの操作性面においてきわめて重要な意味をもつ。 この装置を用いて自由曲面の直接変形を行うソフトウェアを開発した。仮想の工具で自由曲面を押すと彫金を行うように変形が起こる。この時操作者の手には変形量に比例した反力が与えられる。このような直感的な操作によって、従来のマウスを用いたCADに比べてはるかに自由な造形作業が可能になった。
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