可動空間が広く汎用性の高い新型機構としてクレーンのワイヤ下端に平面内3リンクマニピュレータを懸垂したロボットを構成し、その機構特性、制御法を確立した。本ロボットではマニピュレータベースがワイヤに連結されており、宇宙ロボットのようにマニピュレータの各関節を動かすとベース自身も傾くため、運動学自体が複雑となる。 本研究では、ワイヤ支点の鉛直軸に対する傾き角と、マニピュレータベースとワイヤの成す角をそれぞれ受動関節角としてモデル化し、次に受動関節の動作を能動関節の動作により表現することにより、宇宙マニピュレータの拡張ヤコビ行列に対応したヤコビ行列を求めた。マニピュレータ手先の可動領域は、リンクの長さ、質量バランスに大きく影響されるため、上で求めたヤコビ行列を用いた解析を行い、その結果マニピュレータのリンク長、ベースリンクのワイヤ取り付け点とベース重心間の距離が長いこと、ベース質量が大きいこと等が可動領域を大きくするために必要であることを明らかにした。 制御法に関しては、マニピュレータの動力学を求め、これを受動関節の運動、マニピュレータ関節の運動に分離し、受動関節の運動を拘束運動と見なすことにより、受動関節を持つマニピュレータの動力学方程式を求めた。軌道制御アルゴリズムの構築に当っては、軌道制御と振動制御の2つのフェーズに分離し、軌道制御においては非線形フィードバックにより線形化し、PID制御系を構成することで実現した。振動制御においては釣合点近傍において系を線形近似し、これに対して最適レギュレータを構成した。シミュレーション、DDモータを利用した制御実験の結果より、上記制御アルゴリズムが有効に作用することを検証した。
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