研究概要 |
本研究において,前腕動力義手の多自由度化を可能とする機構の考案と設計・製作をおこなった.前腕義手は失われた前腕部を代替するものであり,その容積並びに重量に大きな制約がある.そのため,これまで実用に用いられてきた動力前腕義手は5指同時の開閉自由度のみをもつものであり,かつその開閉角度のみを制御するものであった.これに対し,本研究で開発した機構は以下の特徴をもつ. 1)多自由度:手首2自由度と,指部4自由度をもつ.駆動用モータは小型DCモータ1個のみであり,1個のステッピングモータにより,伝達ギアの切り替えをおこなう. 2)コンプライアンス可変機能:脊椎動物の骨格筋は屈筋と伸筋の拮抗構造により,間接の角度および間接コンプライアンスを調節している.これに模して,ペアの拮抗するボールねじを同時に同方向あるいは逆方向に駆動することにより,関筋角度およびコンプライアンスを機構的に調節する. 3)コンパクト:設計・製作した動力義手の機構は前腕部にすべて収納できる. 4)指部なじみ機構:1つの指にはDIP,PIPおよびMP関節があり,これを独立して駆動することは機構の制約上不可能である.しかしながら把持物の形状にあわせて,それら3つの関節の角度が自動的に変化し,かつ把持力を調節することのできる機構が必要である.そこで.複合4リンクと遊星ギアの組み合わせにより,1自由度でこれを実現する機構を考案し,製作した. 本年度は,機構の設計・製作を行い,駆動回路およびソフトを製作し,基本的な駆動実験をおこなった結果,ばねの選定およびギアの配置等の修正点を認めたものの,正常に駆動できることを確認した.
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