研究概要 |
現在までに開発されている自律移動ロボットの自己位置認識方法は,標識等の外界を認識して自己位置を計測する方法と,自己の内界センサを用いて変位を計測する方法(デッドレコニング)がある。後者で用いられる内界センサとしては車輪または駆動モータに取り付けられたエンコーダがあるが,旋回時等におこる車輪のスリップにより高精度の計測が困難である。また,地面の凹凸の影響も避けられない。本研究では,デッドレコニングの高精度化を目的として,半導体レーザを用いた二次元非接触速度センサを開発した。平成4年度までに,小型速度センサの試作を行い,投影した縞の垂直方向の速度成分が検出されることを実験により確認していた。 今年度は、まず同じセンサを製作し,合計三台とした。実験では,縞の方向をずらした二台のセンサをロボットに取り付けた後,ロボットの移動方向を変化させて,大部分の方向において速度計測が確実に行われていることを確認した。速度計測が困難な方向については,三台のセンサを搭載し,速度の大きい二台の結果を利用する。 次に,センサからの信号をA/D変換ボードによってホストコンピュータに取り込み,自己相関処理により各センサにおける速度を計算した後,ベクトル合成により速度の方向と大きさを計算した。本実験で使用しているDSPボードのサイクルタイムは50nsec,自己相関信号処理において必要となる積和演算の数は10^5程度であったため,リアルタイム処理が可能であると判断できた。 なお,実際の運用に当たっては,誤差の累積を避けるために外界センサと併用することも考えられる。ただし,この場合でもデッドレコニングの誤差が減少しているので,従来のエンコーダ方式に比較して外界センサの設置間隔や外界情報を取り込むサイクルタイムなどの点で改善が行われている。
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