本研究は、スオーム法の範疇に於いて、他の解析法の助けを借りることなく電子移動速度等のスオームパラメータと整合性の高い、弾性衝突断面積および非弾性衝突断面積の推定を行うことを目的として行われた。推定対象とした衝突断面積は、弾性衝突に関しては運動量移行断面積、非弾性衝突に関しては励起断面積および電離断面積である。はじめに、どの様なスオームパラメータがこれらの断面積の推定に利用できるかについて検討した。その結果、弾性衝突に関しては、(1)電子移動速度→運動量移行面積、(2)拡散係数→運動量移行断面積の組み合わせ、非弾性では(3)励起係数→励起断面積、(4)電離係数→電離断面積、(5)電離係数→励起断面積の組み合わせでの推定が可能であることがかった。この中でも実際のガスの解析を行う際には、スオームデータの豊富な(1)、(4)および(5)の組み合わせが有用であると思われる。(1)に関してはこれまでも何度か報告してきたが、本研究において断面積の形状が複雑になるにつれ、特定のエネルギー範囲断面積の値が、特定の換算電界範囲の電子移動速度に敏感であることがわかった。そこで、この感度の違いを考慮した断面積推定のルールベースをはじめに作成し、このアルゴリズムにより推定を行った。その結果、従来の推定法より精度の高い推定が可能となった。このルールベースをファジィ化することにより、更なる推定精度の向上が望める。
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