本研究は、系統構成要素をサブシステムと呼ばれる単位に分けて表現することにより、電力系統の動特性解析において、制御機器や制御系の変更・追加に柔軟に対応できる支援システムを構成することを目的として遂行された。 近年の電力系統は大規模化および複雑化の傾向が益々強くなり、その案定度、利用率ならびに信頼度を高めることにより、より効率的な運用を行おうとする気運が高まっている。そのような動きの一つとして、パワーエレクトロニクス技術や各種制御理論を適応して、電力系統の動特性を改善し設備の有効利用を図ろうとする研究が盛んに行われている。本研究ではこうした研究においてとくに有効となる解析システムを提案した。 まず、電力系統の構成要素を発電機や超伝導エネルギー貯蔵といった機器、その制御信号を処理する制御系そして送電線や負荷などを含むネットワークの3種に分類した。機器は制御系からの信号とネットワークの電圧を入力とし電流を出力とする形で表現し、制御系は他の制御系、機器あるいはネットワークからのフイ-ドバック構造を持たせた。ネットワークは機器の電流を入力とするインピーダンスとして表現し、それぞれの接続関係を情報として付加した。このとき、各サブシステムをアイコン表現することにより、ワークステーション上で解析対象系統を表現し、それぞれの情報をアイコン表現したサブシステムと結びつけることにより、アイコンのダブルクリックという操作でそれぞれの内容確認および変更を可能とした。この結果、超伝導エネルギー貯蔵などの電力系統の制御機器の設置場所の変更、設置数の増加・減少、制御系の補償要素の変更、フィードバック信号の変更といった作業が容易になり、これらの新しい機器を系統に導入した場合の効果の評価が極めて簡潔に行えるようになった。 現在は、上述の考え方をワークステーション上で実現し、系統解析としては特性の線形化と固有値解析を行う部分を実現したが、今後は、非線形シミュレーションに関しても同じ考え方で実現するとともに、線形化領域での解析との間で繰り返し計算が可能となる両機能の連携処理を実現することが課題である。
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