本研究では、有機金属気相成長法(MOCVD)における選択成長という特徴的な手法によりV溝型GaAs量子細線の作製を試みた。この手法は、in-situで微細構造を作製することができ、エッチング等において問題となるダメ-ジや不純物の影響を回避することができる。量子細線のみならず歪量子細線の作製も行った。これらの光学評価をフェムト秒レーザシステムを用いて行った。そして、以下の知見を得た。 (1)歪量子細線の作製およびその光学評価を行った。その結果、細線幅20nmのInGaAs歪量子細線構造を作製に成功した。また、PL測定により、良好な量子細線構造が形成されていること、In組成比を変化させ、細線のPLピークが系統的にシフトすることを確認した。さらに、PL半値幅から、In組成比0.4で臨界膜厚に達すること、この構造の場合、歪量子井戸と同様の2軸性歪的な歪の受け方をしていることが計算との比較から明らかになった。 (2)量子細線におきる励起子寿命の細線幅依存性を測定した。25nm以下の細線幅では励起子寿命は細線幅が小さくなるにつれて増加することが観測された。この結果は、励起子のコヒーレンス長と波動関数のバリア層への漏れを考慮した遷移確率の計算と一致し、量子細線に本質的な結果であることを確認した。 (3)量子細線における励起子寿命の温度依存性について測定した。50K以上の温度では全てのサンプルにおいて非発光成分の影響が見られ、理論的に予想される温度依存性は見られなかった。
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